一番に感じたのは浮遊感。

フワフワといった感じではなく、重力に引っ張られ落ちていく感覚。


ああ、あの時もこうだった。
今も昔も変わらない。
私の運命は何度も繰り返される。
逃れることの出来ない現実。





部屋で寛いでいると京子やハルが訊ねてきた。
何だがハイテンションで如何したのかと聞くが、 2人も笑っていて答えてくれなかった。

「さあ、ちゃん行きますよ!!」

何が何だか分からぬまま私は2人に引っ張られていく。
着いたのは大きな衣裳部屋。
ボンゴレにこんな部屋あっただろうか?
私が疑問に思っている間に2人はごそごそと奥から大きな箱を持ってき、私に差し出した。

「これツナさんからです」
「ふふふツナ君が一生懸命選んだんだよ」

へえ、ツナがね。
任務関係かなと真紅のリボンを解き開けると、 私が好きなブランドのドレスやバック等一式が入っていた。
パーティーの任務?
でも何も聞いてない。

着てみてと2人に促され、釈然としないが仕方なく着替える。
これで開放されると思ったら大間違いだった。
じゃあ次は化粧と髪ねと言い、あれよあれよと言う間にドレスアップされる。
気づけば何時もより派手に着飾られていた。





2人に連れられて、ホールに行くともう既に多くの客。
最早パーティーという事は確実だった。
何故ツナは言わなかったのか。
私には関係ないから?
それとも私は信用されていないのだろうか。
不安と悲しさ、色んなものが渦巻き唇を噛む。

私が思考の渦に嵌っている内に2人はいなくなっていた。
こうしていても仕方ないと、2人を探そうと周りを見渡すと一人の女性と目が合う。
第一印象は、金髪美人で気位の高そうな女性。
私と違って綺麗で、皆から愛されるんだろうなと思った。
でもその目に映るのは嫉妬や怒りという感情。
私に向けて殺気も送ってくるが、それでも尚私は綺麗だと思った。
感情を素直に出せる彼女が、羨ましく輝いて見えたのかもしれない。

「貴方がさん?」

カツカツとヒールの音を響かせ、近寄ってくる。
その名前で呼ばれるのは久しぶりだと、場違いな事を考えながらも是と答えた。

「ねえ、如何して貴方なの?私は生まれてきた時から努力してきたのよ」

優しく問う彼女だが、パーティーについても聞かされてなかった私は、 それだけでも何が何だか分からないのにもう話についていけなかった。

「分からないの?」

首を傾げていた私を見て、彼女は本当にと言うかの様に問い質す。

「ええ」
「ふざけないで頂戴!!」
「!?」

いきなり豹変した彼女に驚く。
その後もギャアギャアと叫んでいる様だが私の耳には届いていなかった。
私はツナが綺麗な女性に囲まれて微笑んでいる姿に釘付けだったから。

「ちょっと、何処見ているのよ!!!こっちを見なさい!!!!」

いきなり引っ張られて体勢を崩した私は、気づけば階段から落下していた。
急いで体勢を直そうとしたが、一瞬で止める。

周りでキャーという叫び声や私の名を呼ぶ声が何処か遠くに聞こえる。
ああ、昔もこんな事があったな。
あの時はお姉様が受け止めようとしてくれたんだけど、 高さが高さだけに怪我をさせてしまったんだっけ。
でも今回は下に人はいないみたいだし、よかった。
まるで自分の事じゃない様に冷静な私。

そんな筈じゃなかったと恐怖に脅える彼女を見、大丈夫と微笑む。
声に出したつもりだったが、思ったより小さな声だったかもしれない。
聞こえてるといいな。

床に叩きつけられるのを覚悟し、静かに目を閉じた。
Giada