。御前、前から京の動きを探ってただろう」
「うん。してたよ」
「で、今はどうだ」
「・・・相変らずだよ」
「そうか」
「後数年すると激しくなっていくだろうね」
「気おつけろよ」
「くす、お気遣い有り難う。新津覚之進先生」
「厭味かよ」
「クスクス」

滅多なことがなければ、関わるなという遠まわしの牽制。
は比古に山で新津覚之進として平和に生きてほしかった。
何の刺激のない生活だが、それが尊いものだと知っていたし、比古と一緒にいて落ち着くのだ。
もう比古はの生活の一部になりつつあった。




















「はあっ、やあっ」
シュッ、ビュン
「・・・・・・・」
「やってるね。この辺でお昼にしない?」
「まだ終わってねぇ」
「剣心、その辺で休憩にしてお昼にしよ」
「分かった」
「まったく、御前は。俺の話を聞かねぇな」
「だって今≪お腹空いたから、俺だけ休憩するか≫って思ったでしょ」
「・・・・・・」
はお見通しだった。
「あれ、師匠どうしたの?」

薄っすらと眉間に皺を寄せている比古を見て不思議そうに首を傾げる剣心。

「何でもねぇ」
「ふーん。ところで。ずっと気になってたんだけど」
「何」
「師匠と随分仲いいけど、どれくらい一緒にいるの?」
「さあ?」

本当に覚えていないのか疑いたくなるような表情で笑う

「・・・・・・覚えてねぇな」

の顔をチラッと見て言葉を濁す。

「じゃあ、見た目若そうだけどの歳って師匠と同じ?」
「君。何言ってるのか分かってる?」
「う、うん・・・」
「そう。いい、女の人に歳を聞いちゃいけないんだよ。次聞いたら・・・分かるよね?」
「ご、ごごごごご御免なさい!!」
「分かればいいんだよ」


「言っただろう。に歳を聞くなって」
「言ってないよ」
「そうだったか」
「・・・(確信犯)」

よく見ると比古の目が笑っていた。

「ま、次からはの逆鱗に触らないように気をつけろ」
「分かってる」

何だか面白くない剣心はむくれてしまった。




























賑やかな都。
は珍しく甘味屋で団子を頬張っていた。
美人ながさぞ美味しそうに、食べる姿は目立っていた。
それを見てに声を掛けるという馬鹿な奴がいた。

「そこの姉ちゃん、これから俺達と遊びにいかねぇか」

の反応は無視だった。

「おいおい、無視はねぇんじゃねえか」

なおも無視。

「下手に出てればつけ上がりやがって」

いつ下手に出たのか疑問だ。
怒り沸騰の男達はに手をあげようと伸ばしてきた。

「はいはい、その辺で止めて下さい」

の横にいたいかにも弱そうな優男が、男達の腕を掴んでいた。

「何だ御前!!」
「その場に居合わせた一村人ですよ」

と言いながらも男達を締め上げる。

「ぐぅ」
「まだやりますか」
「糞、覚えておけよ」
「覚えていたら大変になるのは、貴方達なんですがね」
「クスクス。新撰組だから?一番隊隊長さん」
「知ってたんですね」
「何回か見たことあっただけ」
「そうですか。失礼ですが貴方の名前は?」


小さな声でポツリと言うと、いつの間にか消えていた。