久しい人と場所
「久しいね。ダンブルドア」
抑揚のない声だったが、親しいものしか分からないぐらい微妙な感情の籠もる声だった。
「フォフォフォ。本当に久しいな」
「……その笑い方気持ち悪い」
無表情のままポツリと一言。
「フォフォフォ」
言われなれているダンブルドアは気にしないどころか、嫌がらせのようにバルタン笑い(?)をし続け、魔法で紅茶とお菓子を出した。
「それより……大丈夫かのう」
の目は相変らず虚ろで、消えてしまいそうな危うさが漂っていた。
「……少し疲れた」
「そうか」
「何時になった見つけられえるのかな?」
ダンブルドアは何も言えなかった。
「この学校に来ると彼との日々ばかり思い出す」
そっと目を閉じて、独り言のように話だす。
「彼はもういないのに影ばかり追いかけてしまう。比べてしまう。此れではいけないと……分かってる。分かってるけど、止められない。だからせめてアレを見つけたい」
目を開けダンブルドアを見る。
「でも私此処にいる事でダンブルドアに迷惑をかけるかもしれない」
「迷惑とは思っておらんよ。いつもいってるじゃろ。頼ってもいいんだと」
「ありがとう。でもね、国を安定させるのに時間が掛かりすぎたよ。あれから本当何一つ解決してなくて、限界なのかもしれない」
静かに紅茶を飲みつつ、この僕が彼の死でこんなになってしまうなんてと呟いていた。
暫く沈黙がいた。
バサバサ
今まで何処かに行っていた不死鳥が帰ってきたようだ。
「フォークス」
名前を呼ぶと嬉しそうに飛んでき、擦り寄ってきた。
「ふふふ。慰めてくれるんだね。ありがとう」
どういたしましてと言うように鳴く。
「どうして僕の周りは優しい人が多いんだろうね」
「が優しいから、周りも必然と優しくなっていくんじゃ」
「ま、そういうことにしとくよ」
「リドルはやっぱり闇に?」
首を縦に振り頷く。
「すまない。忠告されていだが、止めることは出来んかった」
「ん?結局僕だって止められなかったんだから謝ることはないよ」
天井を仰ぎ、悲しそうに
「それにしても、僕がリドルに一緒にいられなかったのが誤算だったな。あのまま、リドルを息子にしてもよかったと思うんだよね。というか息子が欲しかった」
「……本人が嫌がると思うぞぉ」
「リドルの意思なんか無視に決まってるじゃないか。それに僕に逆らえるわけないよ」
「……そうだったな」
詩を読むかのように噤む言葉。
「全てがこの学園から始まった」
「良いことも」
「悪いことも」
「此処から」
「過去も」
「未来も」
「愛しい人との思いでも」
「全ては彼が造ったこのホグワーツから」
「心休まりずっといたい場所」
「心乱れ永くいたくない場所」
「大好き」
「大嫌い」
「此処は彼が生き」
「死んだ場所」
「此れからも僕は此処から始まり」
「終わる」
「この学園と共にする為に」
「全てを捨てよう」
「何もかもも」
「全てを捨てて」
「彼の愛したホグワーツと共に」
「はぁ、いい加減疲れた。探すのも今回で最後にするよ」
「見つからなかったらどうするのじゃ」
返事の変わりにはまるで泣いているかのようにニッコリ笑う。
に感情が現れたのは最初と最後だけだった。
今までこんなに憔悴したは始めてであり、今まで彼の死を長い間耐えてきた結果なのかもしれない。