唯一時を共有する者
「久しいね」
「そうじゃな。何時ぶりじゃろうか」
「確か君が僕に燃やされそうになったあの時ぶりじゃない?」
ブルブルと小刻みに震え、湿ってくる僕の頭の上の組み分け帽子。
僕の髪の毛を湿らせないでくれない?
今度は本気で燃やすよ。
僕の考えに気づいたのか組み分け帽子は、焦りながら話題を変えてきた。
「ところで此れで何回目の学校だったか?」
「そんなの覚えてない。あ、でも君の名前は覚えてるよ。確か由緒正しいとかで長ったらしい……ジェイソン・ハーレス・ウイリアム・キャンディレノー「もういい。最後まで言っていたら日が暮れてしまうじゃろ。それにしても何で知ってるんじゃ」被らないでくれる??」
「す、すまん」
「ま、それは置いとくとして、彼が自慢げに話してたのを聞いてたし。何より君は彼の作品だしね」
至極楽しそうにしながらも、何処か覇気のないやり取りをする。
「今年でね」
らしくもなく、ゆっくりと覚悟を表すかのように言葉を紡ぐ。
「今年で最後にするから」
それは 執着してきた学校との別れ 生涯愛すると誓った彼との決別 ―――――の諦め を意味していた。
何せ何百年と前からずっと探して見つからなかったのが、今回で見つかるとは到底思えないのだから。
「そうか。だったら
『グリフィンドール』」
長い沈黙の中まだかまだかと待っていた生徒達は、組み分け帽子の声と共にワーと歓声をあげて喜んだ。
といっても主に喜んでいるのいはグリフィンドールだったが。
「、何かあればワシも手を貸そう」
「クスクス。手はないのに?」
と言いつつも口元を緩め、組み分け帽子に手をかける。
「彼らが創った学園じゃ。思いっきり楽しんで来るといい」
「ありがとう。Dear my friend.」