暗く閉ざす心


















如何してこうなってしまったのだろうか。








「……ある男を、殺す」

サスケのあの言葉を聞いて胸が痛んだ。

ああ、これからイタチ追いかけて、危険な道でも力を手に入れる為にどんな所だと行くだろう。



ごめんなさい、サスケ。

私は全てを知っているの。

そして時期が来ればイタチの元へ。



即ち

裏切り



助けられるだけの力を持ちながら、私は……。







サスケには悪いけど私ね、一族が大嫌いだったの。

いえ、殺したいほど、憎み怨んでいた。
















私は一族の巫女だった。

毎日監視され、仕事を失敗したり、言われたこと意外のことをすればお仕置きをされた。

だから、どんなに理不尽な要求でも毎日頑張ってた。

頑張ってたのに―――。



なのに一族は、私の前で父を嬲り殺し、母の体を代わるがわる男達が玩んだ。

私は半狂乱になった。















そんな時イタチに会った。

その時にイタチに言われた。

『俺は何れ一族を殺す。俺について来い』

さし伸ばされた手。

こんな事、初めてだった。

私は迷わず手をとった。







その後ああ、そうか私も殺せばよかったんだと頭の中で思っていた。

そしたら私がサスケに怨まれてたのかな。

それは嫌だなと漠然と思う。

そんな風に考えてる私は、狂ってるのかもしれない。

でも後悔はしてない。





















サスケと初めて会ったのはまだ小さかった頃、何時もより寒い夜だった。

トコトコとまだ幼いサスケが私の部屋に突然入ってきた。

吃驚した。

今まで大人しか来なかったし、彼らのように絡みつく嫌な視線を感じなかったからだ。

きっと迷い込んだのだと思い聞いてみた。

に会いに来たんだ」

嬉しい方に期待を裏切ってくれた。

でもそうすると……

「僕と、将来結婚するんだって。だからたまにお話して仲良くしなさいって」

新しい人質。

この子まで使おうというのか。

一族は何処まで私を追い込もうというのだ。















分かっていた。

一族の中で大事にされていて、理不尽な扱いは受けないはずだと。

だから必用以上仲良くするつもりは微塵もなかった。



















なのに気づけばサスケに依存していく私。

このままではいけないと思うけど、どんどんサスケに溺れていく私。

駄目。

止められなくなる前に心に蓋をしなくては。

















そして私は心に蓋をした。

蓋をし、一番始めに会ったのがサスケではなくイタチだった。

此処から悲劇は始まったのかもしれない。

私が蓋をしてサスケへの思いを忘れていなければ、イタチのことを止めていたかもしれない。

せめて私が一族を殺してれば、サスケを苦しませることもなかったかもしれない。

もしと考えては、きっと結果は一緒になっただろうと冷静に分析する私。



もしという光と結果という闇。

心に巣食う闇は罪悪感と共に大きくなるばかり。





















私は残酷だ。

イタチから迎えが来るまでとはいえ、被害者ぶって火の国でのうのうと暮らす私。

そして……全てを知り、イタチと組んでいるのにサスケに微笑む私。

笑顔を貼り付け、何て事のない平和な日々を只管おくる。









そんな中、サスケの目が復讐の色に染まるのを、

また愛おしそうに私を見るサスケを見、

私の心を大きく揺り動かし、氷の刃が突き刺す。




「サンキュ」

止めて。





嫌、呼ばないで。



「一番大切だ」

言わないで。



「好きだ」

言わないで。



「愛してる」

ポロポロと流れる涙。



ごめんなさい。

許して。








「何泣いてるんだよ」