何時もこのカフェにいる彼女。
初め綺麗な子だなと見ているだけだったが、次第に目が離せなくなり何度も声を掛けようとしたが出来ないまま、1週間が過ぎようとしていた。
恋なのだろうか。
確かに俺は昔、京子ちゃんが好きだったが結局恋ではなく唯の憧れだった。
だから厳密には恋はしたことなく、俺には恋とは酷く曖昧なものでよく分からないものだった。
今回も超直感が何かを告げているのか、それとも恋なのか分からなかった。
あれから10年たちボンゴレ10代目ボスになっても所詮俺は駄目ツナだ。
一歩踏み出す勇気すらない。
また今日もかけられないまま終わるのかと、諦めつつ帰ろうとカフェから目を逸らし背を向けた。
突風が吹いたと思うと、俺の前に帽子が飛んできた。
「あの。帽子取っていただけませんか?」
「はい」
俺は彼女の声を一度も聞いたことがなかったか為、何の疑いも無く振り向き帽子を差し出して固まった。
声をかけてきたのは彼女だったのだ。
リボーンが見たら怒られるだろうなとぼんやり思いつつも、俺は焦りすぎて言葉も出ない状態だった。
「ありがとうございます」
だが傍目には焦ってる様には見えなかった様で、彼女はにこやかに笑っていた。
「お礼に此処のケーキを奢らせて下さい」
帽子を拾っただけなのに義理堅い。
平常心に戻っていた俺もニッコリ笑い、この機会を逃す手はないと考え誘いを受けることにした。
「じゃあ、言葉に甘えようかな」
*
「此処のチーズケーキは絶品なんです」
「甘過ぎず、酸っぱ過ぎず美味しいね」
今までこんな美味しいチーズケーキは食べたことがない。
そういえば誰かが、チーズケーキが絶品のカフェが近くにあると言っていたような。
「帽子を拾って貰っただけで、お礼するなんてって思いましたよね?」
やっぱり何かあったのか。
「うん」
「実はですね、前から貴方の事をこのカフェから見てたんです」
「ぇ」
だが一度も目が合った事はない。
「見てたっていっても、恥かしくて気配を感じてただけなんですけどね」
俺にも悟られずに気配を感じるって……。
相当強い。
きっと俺の視線も感ずいてたに違いない。
普通はこの会話や考えで、彼女を警戒するだろうが、俺はそんなものは微塵もなかった。
不思議だ。
それにどうして俺を見ていたのかが気になった。
「ふふふ。私沢田って言います」
いきなり名前?
ん、沢田?
「初めましてお兄ちゃん」