聞こえてくる歌














転校入から1週間。
すでにもう猫を被るのが疲れてきただった。
≪1週間たったけどあまり収穫はなかったな≫
はそんなことを考えつつ、人気がない裏庭を歩いていた。
髪が木々の隙間から漏れた光に照らされていた。
今まで静だったこの場にいきなり突風が吹き、耳障りな音が響いてきた。



ガリガリガリ バキッ ドカッ ガシャンッッ



「…………ガリガリガリって何の音?」
は面白そうに呟いた。



















「くっくっく。そんな所に尻餅ついてないで起きろよ」
「無様だな。へなちょこディーノ」
数人の少年が金髪の少年を殴る蹴る…………虐めていた。




≪弱いものを甚振って楽しむなんて…………なんて醜い≫
は微笑しながら気配を消して近づいた。







「何してるの?」
綺麗なソプラノの声が辺りに響いた。
「!!!!!!!!!!!」
虐められているところに、声をかけからか、金髪の少年は吃驚していた。
「……へなちょこディーノを鍛えてやってるんだよ」
虐めていた少年達は自信満々に答えた。
「ふふふ。そうなの?じゃあ私が貴方達を鍛えてあげるわ。手加減下手だから間違って、腕を切り落としたり、殺しちゃっても許して?死んでしまった場合は、一族全部、皆殺しにして処分しとくから安心してちょうだい」
何に安心するのか疑問だ。
誰もが見惚れるほどの笑みで、恐ろしいことをサラッと言いクスクス笑っていた。
妙な迫力もあり、虐めていた少年達は顔を真っ青にして逃げていった。
可愛だが、に見つかったのが運のつきだ。
≪愚かな奴らね≫
きっと今逃げても、後で確実に暇つぶし・・・・につき合わせられるだろう。



まるで悪魔の様な少女………後に『悪魔の歌姫』と呼ばれることになる。











「………………」
少年は地面に座ったまま唖然とを見ていた。
なかなか立ち上がらないのでは手をさし出した。
はっと、我に返えり慌てて少年は手をとり
「ありがとう」
屈託ない笑顔で御礼を述べた。
≪太陽の様な……私にはけしてできない笑顔≫




「………ええ」
「俺ディーノっていうんだけど、君の名前教えてくれるか?」
よ。少年」
「ディーノだ。少年じゃない」
「クスッ。少年が虐められないぐらい、強くなったら呼んであげる」
はいつものお嬢様の様ではなく、親しい友と話すときの口調に戻っていた。
とはいえ少しだが。
がディーノを気に入った証拠だった。


いづれ強くなる。そして、この運命に巻き込まれる―――――


予言より明確な確信に似た言葉。




「何か言ったか?」
「いいえ。早く強くなってね」
それだけ言うとは立ち去った。






















満月の夜。
スクアーロは仕事が終わり、家に帰る途中だった。
悲しみに満ちた歌声が何処からか聞こえてきた。
「何だぁ。」
どうも気になったスクアーロは、声のする方に気配を消し近づいていった。



〜♪



綺麗な歌声だった。
だがその声と少女には、やはり悲しみが、そして儚さがあり
目を離せば消えてしまうのではないかという危うさもあった。



暫く聞き惚れていたスクアーロはやっと
少女が1週間前に転校してきただと気づいた。
しかしザーと風が吹き一瞬気がそれた隙には消えていた。











≪このあいだとは随分雰囲気が随分違うなぁ。……何者だぁ≫