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□BooK4◆嫁の正体
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悠舜としては、紅黎深の場合とは立場も状況も違うとは言え、彼の時より長く力を隠蔽されたことがいただけない。そんなの本当の顔に龍蓮だけが気づいたことも、気に入らない。この悔しさの中、優しく希望を聞き入れるゆとりはない。

「“あの”黎深と同じ過ちを繰り返さないよう、一人で缶詰めして下さい。お茶するときは呼んであげますから」

悔しそうに眉間にシワを刻んだにひとつ微笑み、戸口へ向かう。




「悠舜!」

「…何ですか」

「本当に、仕事にばっかり熱いな。もう少し他の楽しみも知った方がいいんじゃないか。無趣味は老後に良くないぞ〜」

振り向くと、ニヤリと笑う綺麗な顔があった。嫌味を言いたがる癖も、朔洵並みという訳らしい。

「仕事ひとつ真剣に打ち込めないあなたが、私よりも世の楽しみを知っているとはとても思えませんね。こそ、人生の本当の楽しみを知るべきですよ。安心なさい、茶州にいる間はたっぷり教えて差し上げます」

いらんっ、と鋭く声を上げて睨んできたので、にっこり笑い返す。まだまだ青二才、なかなか可愛い……

などと微笑ましく感じたことにはたと気づいて、悠舜は今度は、自分に対する呆れからの溜め息を零した。





嫁の正体◆了


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