天穹散華サイト様
パロディ
□武姫は深き黒に惑う
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その際ビクリと燿世が体を揺らしたが、は気づかない。
「今日、新人さんが来てね」
「・・・・ああ。もうそんな時期か」
文官や武官と同じように、王宮の女官になるにもそれなりの試験が実施される。
なかでも王の后妃たちが住まう後宮女官採用試験は受かっただけで将来大貴族との婚姻が望めるだけあって非常に難易度が高いのだ。
別に大貴族との婚姻を望んでいいるわけではないが、国武試を女人が受けられない以上、一人立ちを目標とするにはこれしか身を立てる術がなかった。
純粋な戦闘技術ならば羽林軍将軍雷炎や燿世にもひけを取らない自信があるのに、女官。持つのは重くてせいぜい茶器一式。おまけに女同士というのは細かなことでいつまでもねちねちねちねちねちねちねちねち・・・っ。
それに加え、今回のこの件である。
「それで私もけっこうな古株だからさー。頼まれたのよ。新人さんの指導」
「・・・・・・」
に指導を頼むとは、今回の新人指導女官は相当厳しいのだろう。
切れ長の双眸涼やかに、詩歌を吟じればかの鄭悠舜が絶賛すると評判の女官。それがだ。
波いる求婚者たちをことごとく袖にした彼の筆頭女官とは違い、には想いを寄せる特定の相手がいないことから、下手をすると今一番朝廷の男たちの注目を浴びている。そんな幼馴染みに熱を上げる同僚を、燿世は数多く目にしてきた。
寡黙で物腰柔らか、控え目でけして出すぎることのない有能な女官として、後宮のみならず外朝へも出向くことがあるので、朝廷にいる間は自分を厳しく律している。
当然、彼女が指導にあたる新人女官にもそういう態度を求めるだろうから、彼女に指導される新人は相当な根性が必要だろう。
他人事ながら、燿世はに指導される新人女官が少し気の毒になった。
なにを隠そう、自分もまた雷炎とともに幼い頃この年下の幼馴染みの厳しい指導を受けた一人だからだ。
『に勝てんというに求婚とはな・・・いい度胸をしておる』
そう言ったのはの祖父上だったか・・・嫌なことを思い出した。
「・・・・聞いてる?燿世」
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