Mystic Taleサイト様
パロディ
□武姫は深き黒に惑う
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「ああ・・・」
「──思いっきり生返事じゃんさ・・・」
ため息を吐く。
ぐて、と卓子に突っぷしそのまま酒を煽る姿は、男顔負けななんとも言い難い色気がある。
もともと美少年めいた顔立ちをしているだが、さすがにそろそろ女らしい色気が身についてきてもいいではないか・・・燿世はとても複雑な気分になった。
出仕の時以外化粧もしなければ髪も結わない。おまけに私服はすべて男物。
──自分はけして男色家ではない。なのになぜ普段のとともにいると周りからそう囁かれるのか。
「──」
「んー?」
「結婚し「却下」
「・・・・・・・」
「私に未だに勝てないうちは、求婚なんて聞いてやる必要はない、って。お爺ちゃんが」
「宋将軍・・・・」
燿世は思わず額に手をあて、うめいた。
あれこれ画策される前にと、まずはに己の気持ちを伝えようとしたら・・・孫馬鹿なかつての猛将はやはりそれほど甘くないらしい。
ちなみにの数少ない欠点のひとつが、宋太傅の孫娘だということである。
彼の太傅の影響か幼少時から剣を握り、彼について屈強な武官、将軍たちに混じってそれを振るっていたの実力は、現左右羽林軍両将軍の軽く上を行く。
実の祖父でさえ打ち合えば半分は取られると言うのだから、間違いなく朝廷最強の実力者である。
ついでに今はもう引退した先王時代の羽林軍所属武官並びに将軍たちですこぶる人気なため、下手に言い寄ろうとすると妙に強いご老人方の闇討ちに遭うという。
周囲の護りはかつての猛将・勇将、おまけにそのなかでも最強の強さを誇るのが最終関門とその直前にいるのだから、もはやそれは口説きたいと思っている方にしては欠点に等しい。
かろうじて燿世や雷炎はその元・武官将軍の方々からは敵視されていないが、如何せんの祖父の護りが固すぎる。
魔が射して抱き締めようとうっかり伸ばしかけた腕が何処からともなく飛んできた矢(気配・手加減ともにまったくなし)に牽制されて以来、迂濶に触れようとすれば命に関わる。切実に。
「だいたい燿世許嫁いるんじゃん」
「・・・・・なんの話だ?」
「またまた。今日詰め寄られたよ?その許嫁って娘に」
「詰め寄られた・・・・」
「『あの方と別れなさい』だってさ。敵意ある視線だなー、ってわかりつつも無視してたら、いきなり。まだ向こうは話聞くだけでいいかもしれんけどこっちは仕事中なんだからさー。そういうの考えれないのあの娘」
「・・・・待て。私は知らん」
「なかなか情熱的な許嫁みたいだね祝福するよおめでとうでも結婚式はできれば呼ばない方向でよろしく」
見事な棒読みである。
「──私の知る限り、許嫁など存在しないはずだが」
「や、そもそも許嫁なんて親が決めるもんだから本人にまだ伝わってないとかいうだけじゃないの?別に不思議はないよね。彩七家に限らず名家ってそんなもんでしょ」
「──私は以外の妻も許嫁もいらん。よしんばいたとしても、結婚などあり得ない。即破談にする」
「・・・・・・」
またいきなりとんでもないことを言い出した燿世に、は額を押さえた。
気分としては火事と雷と地震がいっぺんに来た感じである。
そして、俄かに今までこの幼馴染みに愚痴っていた自分が馬鹿らしくなってきた。
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